フクシマ:危機ののりこえを疑問に付す新事態


LEMONDE | 15.05.11ルモンド、2011年5月15日


5月14日、福島の原子力事故は最初の犠牲者を生んだ。今のところ死因は明らかではないが、技術者一人の死亡が確認され、原子力発電所における労働条件がどれほど過酷なものであるかがあらためて明らかになったのである。発電所をコントロールしようとする努力の過程で、労働者たちは、3月11日の震災のあと、この危機の最初の数日間に起こった爆発と火災によって引き起こされた損害がどれほど大きなものであったかを発見し、確認することになった。こうして5月12日木曜日には、福島第一原発1号炉の水位計がふたたび稼働されたのをうけて、彼らは核燃料の冷却に必須の水位が、想定されていたよりもずっと低いことを発見したのである。

これまで示唆されるだけで確認されては来なかった、原子炉圧力容器に大きな穴が開いているのではないかという仮説が、ふたたび現実味を帯びている。専門家たちは今日でもなお、多くの不確定要素を孕んだ状況に直面していることを認めている。


放射性物質は圧力容器から漏れ出してしまったのか当初から、東京電力は1号炉、2号炉、3号炉の炉心にある燃料が劣化し、部分的に溶解していることを示唆してきた。いまや東京電力は、1号炉においては、燃料のほとんどがおそらくは溶解してしまっており、炉心を囲う鋼鉄製の圧力容器の底に溜まっていると見なすにいたっている。日本の専門家によれば、この溶解した炉心のうち少量は、核燃料を収める金属製の鞘と溶けあって、コリウムと呼ばれるマグマをなし、核反応をコントロールするために用いられる制御棒を差し込むための結合部分を通して、圧力容器から漏れ出してしまった可能性があるという(まだこの事実は確認されてはいない)。5月12日、東京電力は、コリウムが一つないし複数の穴から圧力容器の底を突き抜けてしまった可能性があることを示唆した。気密性を失った結合部分ないしは穴を通じて核燃料に直接触れたために、きわめて高度の放射能を帯びた水が、漏出しているかもしれないというのである。


環境汚染のリスクはいかなるものか炉心溶解と圧力容器の底抜けが事実とすれば、事故発生後の最初の数時間か最初の数日間に起こった。これらの損害は今日、確認できる状態になっている。というのも、5月5日には、1号炉の建物のなかに労働者が立ち入っているからだ。

東京電力によると、水が残っている原子炉圧力容器の温度は、100度から120度の間で安定しているという。したがって、圧力容器の底に溜まっているコリウムは比較的冷却されており、容器にこれ以上の損害を与える脅威はない。「コリウムが圧力容器に穴をあけてしまったとしても、おそらくコリウムは原子炉の土台をなす7メートルの厚さのコンクリート製の基盤を突き抜けることなく、そこにとどまっていると考えられる」とフランス原子力庁の原子力エネルギー部長クリストフ・べアールは考えている。

したがって、環境汚染のリスクに関しては状況の変化はない。この環境汚染は今日までのところ、おもに原子炉の冷却のために用いられた水の流出によるものである。


危機管理の方針を再考すべきか金曜日、海江田万里経済産業大臣は、6ヶ月から9ヶ月での事態の収拾を目指した東京電力の工程計画は見直されなければならないだろうと述べた。フランスの専門家によれば、たとえ圧力容器からの漏出が起こっているとしても、水を追加することによって、原子炉の冷却回路を再起動することは可能であるという。しかしながら、この手法によれば、また汚染水の排出の問題が生じることになる。「他の解決策を検討する前に、まず現在の状況を正確に把握することが必要です」とべアール氏は強調した。「原子炉にもっと近づくことができなければ、現在のあやふやな状況が続くほかないでしょう」とフランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)のティエリー・シャルルも認めている。シャルル氏によれば、いくつかのデータは矛盾しているという。とりわけ、圧力容器外への核燃料の漏出が示唆されているにもかかわらず、一方では圧力容器内の圧力は大気中の気圧よりも高い値にとどまっているというのが、矛盾の最たるものだ。

他方、東京電力は2号炉と3号炉でも、1号炉と同じような状態になっているのではないかと懸念している。とりわけ懸念が大きいのは3号炉であり、この炉で3月13日に起こった激しい爆発について、複数の日本の専門家たちは、それが本物の核爆発であったのではないかと考えている。5月11日、電力会社側は、この原子炉から放射能汚染された水が漏れ出していること、さらにその一部分は海に流れ出していることを発表した。


Pierre le Hir et Philippe Messmer (à Tokyo)東京より、ピエール・ル・イールとフィリップ・メスメル


(trad. KO)


参考:第1原発収束作業で初の死者 医師診断まで1時間http://www.minyu-net.com/news/news/0515/news3.html
福島原発1号機、格納容器に漏出「打つ手なし」 核燃料100%損傷かー産經新聞http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110513-00000127-san-soci


6.11 脱原発100万人アクション!(全国各地)6月11日は、福島原発震災から3ヶ月。
今なお放射能の放出は続いています。私たちは、人や自然を傷つける電気はいりません。全国各地域の人々とともに、6月11日に脱原発を求める100万人アクションを呼びかけます。6月11日は、声をあげましょう!今こそ脱原発へ!!  http://nonukes.jp/wordpress/

黙ってられない!声を上げよう!!