放射能除去処理計画に多くの未知数


The New York Times, April 16, 2011ニューヨークタイムズ 2011年4月16日
http://www.nytimes.com/2011/04/17/world/asia/17cleanup.html
 
By HIROKO TABUCHI ヒロコ・タブチ


東京 ― 福島第一原子力発電所の混乱した状況にまだ収拾がつかない現段階で、将来の放射能除去処理の契約を取りつけようと競う2つの巨大企業は、作業にかかる期間を10年、――ないし30年と見積もっている。

両社の見通しがこのように大きく隔たっている事実は、およそフクシマに関するあらゆる予測につきまとうもろもろの根本的な不確実さを物語っている。冷却装置がいつ修復され、放射能漏れがいつ収まるのか、作業員たちが原子炉の各部分に近づけるようになるのはいつなのか、また、原子炉、炉内の燃料棒、使用済み燃料棒の損傷はどの程度のものなのかといったことは、今もってはっきりしていないのだ。アメリカ合衆国原子力規制委員会は、少なくとも原子炉の一つで燃料が圧力容器から漏れ出た可能性があると警告している。

木曜日[4月14日]、日立を中心とする国際チームが出した見通しによると、福島第一原発の敷地で、技術者たちのいう「グリーンフィールド」【注】、つまり、すべての住民にとって放射能が法的基準値以下になった状態が回復できるまでに、少なくとも30年は必要だという。日本最大の原子炉供給企業である東芝は、10年で済む、としている。
【注】「グリーンフィールド」とは、「産業に利用されていた土地が、原則的に産業利用以前の条件に復帰した最終段階」を指す。以下を参照。http://en.wikipedia.org/wiki/Greenfield_status


日立、東芝の両社は、大きな原子力関連部門をかかえている。原子力に対する世界中の人々の不信を高めた今回の事故について、何としてもその収束のシナリオを描きたいようだ。放射能除去処理には数十億ドルがかかる見込みであり、そうなれば日立や東芝も収益を改善できるだろう。先週の両社の発表によると、震災による生産や供給の大規模な中断のため、年間の収益が当初の予想に届かない可能性が高い。

東芝佐々木則夫社長は、木曜日[4月14日]に記者らとの会談で、1インチはあろう分厚い提案書を手にしていた。今月、原子炉の操業主である東京電力に提出したもので、廃炉への工程を説明したものである。日立も、これと競合する計画を提出している。

この課題の規模と複雑さはかつてないものだ。爆発などもろもろの損傷を被った上に、メルトダウンを防ぐため海水を注入した福島第一原発では、4基の廃炉が確実となっているが、この4基はもちろん、日本ではまだ原子炉を完全に解体したことがない。同原発の残りの2基が最終的にどうなるかはまだ発表されていないが、こちらも廃炉になる可能性がある。

1979年のペンシルベニア州スリーマイル島の場合、事故は1基の原子炉だけで起きた。また、燃料棒が部分的にメルトダウンを起こしたとはいえ、燃料棒を格納する容器は破損しなかった。それでも、清浄処理は14年の歳月と約10億ドルの費用を要した(同発電所で稼働を続けている2基の原子炉は2014年に廃炉となる予定である)。

他方、1986年にウクライナチェルノブイリで起きた事故の復興作業は、技術者ができれば避けたい先例である。爆発と火災のため、放射性物質を含む大気中に巨大な煙が発生した後、作業員たちは爆発した原子炉を砂と鉛で覆い、最終的に、放射能の放出を食い止めるためにコンクリートで埋めた。このコンクリートで密閉した棺はまだチェルノブイリに残る。付近は居住不可能だ。

今のところ、日本の作業員たちはまだ、原子炉への水の注入――海水でなく真水になったが――を続ける一方で、高濃度の放射能汚染水が漏れるのを食い止めようとしている。さらに、汚染水を出さずに水を循環させるため、発電所の冷却装置復旧を急いでいる。

だが、難しい課題は残っている。木曜日[4月14日]、日本の原子力管理当局は原子炉の1つ[3号機]で温度上昇が見られるとした。強い余震も引き続き起こっている。原子力安全・保安院の西山英彦官房審議官は、福島第一原発では引き続き「難しい」状況が続いていると述べた。

それでも、佐々木社長によると、東芝の技術者たちは「数か月のうちに」原子炉は安定し、完全な冷却が再開できると見込んでいる。佐々木氏は、圧力容器を開けて燃料棒を取り除くまでに5年間、原子炉を解体し、発電所放射能を除去するのに少なくともさらに5年間かかるだろうと述べる。

東芝のチームには、同社が過半数株主となっている[アメリカの]ウェスティングハウス社や、有害物質の処理も手がけるエネルギー技術・サービス企業ボブコック&ウィルコックス社の技術者も含まれる。両社は、スリーマイル島の事故炉で廃炉にたずさわった。

日立の広報担当者イズミサワ・ユウイチ氏は東京で、[東芝の]10年という見通しはあまりに楽観的だと述べた。イズミサワ氏によると、日立の技術者は、10年だと核燃料棒を原子炉から取り出し、安全な貯蔵施設に移送するため核燃料輸送容器に入れるだけで精一杯だと見積もっている。

その後でようやく原子炉建造物の解体を始めることができ、さらに残存する放射能の除去をおこなうことになる、とイズミサワ氏は述べる。

日本第2位の原子炉供給企業である日立は、廃炉計画にたずさわる50人のチームを編成している。ジェネラル・エレクトリック社との合弁原子力事業もおこなっており、アメリカの原子力発電にかかわるエクセロン社やエンジニアリングのベクテル社とも協力している。

「基本的に、原子力発電所は内部から解体するのですが、内部はまだ非常に放射能が強い状態です」とイズミサワ氏は述べる。「日立としては、どのような技術を用いれば、すべてを[東芝のいうように]10年で終えられるのか困惑しています。」

東京都市大学原子力工学を担当する松本哲男氏は、原子炉解体の作業にどのくらいかかるかは、とりわけ核燃料の状態次第だと述べた。

松本氏はこう述べる。「まだ燃料棒の形状をとどめているのか。それとも溶融しており、大きな固まりになってしまっているのか。10年かかるかもしれないし、30年かもしれません。原子炉の中を見るまではわからないのです。」


[イジチ・ケンによるレポート]

(trad. SS)


参考:
世界で最新式の原子力発電所をつくれる技術をもっている会社は日立、東芝、三菱の三社。日本が世界のエネルギー産業をリードするhttp://blog.goo.ne.jp/2005tora/e/75d6225cb1b34fb14462fca584fa72ec
吹き飛んだ将来の飯のタネ 東芝・日立は戦略見直しへhttp://diamond.jp/articles/-/11636?page=2
「会社はコスト優先」 原発の元技術者ら ネットで自己批判(元東芝技術者 後藤政志氏のコメント)http://www.hokkaido-np.co.jp/news/topic/280370.html
日立と東芝福島原発廃炉作業計画をそれぞれ提出http://jp.wsj.com/Japan/node_221872
原発1兆円達成「遅れる」 佐々木則夫東芝社長
http://www.sankeibiz.jp/business/news/110415/bsg1104150501000-n1.htm


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