原発 日本は福島の異常を知っていた


Le Monde Le 22 mars 2011
ル・モンド 2011年3月22日18h25更新

http://www.lemonde.fr/planete/article/2011/03/22/nucleaire-le-japon-avait-ete-alerte-d-irregularites-a-fukushima_1496991_3244.html

 福島原子力発電所に被害をもたらした地震津波から1ヶ月前の2月7日、日本の原子力安全委員会は、6つの原子炉のうち最も古い原子炉について、安全性に対する懸念があったにもかかわらず、今後10年間の追加の操業を許可していたことが、3月21日火曜日のニューヨークタイムズの報道でわかった。
http://www.nytimes.com/2011/03/22/world/asia/22nuclear.html?pagewanted=1&_r=2&hp

 原子力安全委員会は、福島第一原発1号炉の安全設備の発電系統にひび割れがあることを指摘していた。しかし、同委員会はメンテナンスの作業を強化することを条件として、原子炉の維持を許可した。この審議の要約は、同委員会を管轄する日本の経済産業省のウェブサイトで公開されている。
http://www.meti.go.jp/press/20110207001/20110207001.html

 問題のひび割れによって、発電機のモーターは海水によって腐蝕しやすい状態にあったと思われる。これらのモーターは津波によって大きな被害を受け、その結果、原子炉の維持に欠かせない冷却装置の停止にいたった。

 地震から10日ほど前、東京電力は、政府に対して点検調査のデータを誤摩化していたことを明かしていた。東京電力は、30個ほどの部品の安全点検を行なったと報告していたが、それらの点検はまったく行なわれていなかったのだ。

 東京電力はとりわけ、原子炉の温度調節を行なうバルブの配電盤について、11年間にわたって内部調査を行なっていなかったことを認めていた。実際には通常の点検だけで済ませていた技術者たちは、事実と反する報告を行っていた。

 これに対して、規制にあたる原子力安全委員会は、「メンテナンスの運営に不備があった」とし、「内部調査の質が不十分であった」と結論づけていた。


「原子炉全体が老朽化していた」
 しかし、その数週間前、原子力安全委員会がこの欠陥のある原子炉の転換を行なわないことを許可した際には、すでにいくつもの異常が発見されていたのである。この決定は、通常認められている40年の期限を越えて、福島第一原発1号炉の操業を延長することを許可したこの専門家からなる安全委員会の独立性が、疑わしいものであることを明かしている。

 原子炉(1号炉)が建設されたのは1971年のことだった。審議の過程で、東京電力は、この原子炉は60年間操業できると主張していた。

 「設備の維持と点検に関して報告された違反が、地震によって発生した数多くの問題に影響を与えたかいなかは明らかではない」と原子力安全・保安院はコメントしているが、同院は同時に、東京電力に対して従来の行ないをあらため、新たなメンテナンスのプランを6月2日までに提出するよう求めている。

 ニューヨークタイムズの記事のなかで、福島第一原発の原子炉建設に協力した技術者である田中光彦は、原子炉はあきらかに老朽化していたと証言している。「もう原子炉を換えなければいけないときに来ていました」と彼は言っている。「もちろん、津波が原子炉に被害を与えたことはたしかです。しかし、配管や、機器や、情報制御、それに原子炉の総体までもが老朽化していたことで、危険がいっそう大きなものになっていたことはまちがいありません。」

 元福島県知事で、原発反対派の佐藤栄佐久は、原子力安全委員会による点検が実際の効力を持たないことを、かねてから批判してきた。2000年には、すでにある調査委員が原子力安全委員会に対して、福島原発の格納器にひび割れが見られることを指摘していたにもかかわらず、知事がその報告を受けたのは二年後になってからだった。「規制にあたるべき委員たちが、ひび割れに関する報告書を握りつぶしていたんです」と佐藤氏は証言している。この間、東京電力と政府の間の関係は紛糾しているように見られてきたが、佐藤氏によれば、今回の事故はむしろ、規制にあたる政府当局と、原子力発電に携わる企業のあいだの共犯関係を明らかにするものなのだ。

 この先10年間、数多くの原子炉が築40年の運命の日を迎えることになっており、その転換に要するコストには天文学的な数字が予想されている。日本の反原発団体は、この国の原子力安全委員会が、みずから発見していた問題を矮小化してきた背景には、このコストへの懸念が存在していたと推測している。

アントワーヌ・ブーティエ
(trad. KO)