「退職者たちの行動隊」、フクシマの若い労働者たちに交代を申し出

http://www.lemonde.fr/japon/article/2011/06/06/fukushima-le-corps-des-veterans-propose-son-aide_1532374_1492975.html

Le Monde Le 7 juin 2011
ル・モンド』2011年6月7日



彼らの数は250人近い。年齢は60代かそれ以上。3月11日の震災で事故を起こした福島第一原子力発電所で、放射線のリスクに立ち向かう用意がある者たちだ。

この人々の中には、技術者も、医師も、あるいは単なる労働者もいる。彼らはみな、山田恭暉氏(72才)の呼びかけに応じた。彼は住友金属工業を定年退職した技術者だ。燃料棒の一部が溶解している2号機、3号機のそばで、毎日交代しながら働いている人々をテレビで見た山田氏は、何かしなければ、と思い立ったのである。

彼は、今日ではその欠陥が明らかとなった原子力政策を「意図的にせよそうでないにせよ」支持したのは自分の世代であり、またその結果を引き受けなければならないのもこの世代であって、原子炉を安定させるために送り込まれるのは若者たちであってはならないと考えている。彼は言う。「これは決死隊なんかじゃありません!私たちの寿命は、あと15年から20年くらいといったところでしょう。放射能による癌が進行するほどの時間は残されていないのです!」

彼の呼びかけがなされた後で、247人の退職者たちが、自分たちの責任感を表明するべく意思表示を行った。こうして「退職者たちの行動隊」が誕生したのだ。彼ら老齢のボランティアたちは、政治家ならびに原子力発電所を動かしている東京電力(Tepco)に申し出た。だが彼らの提案は採用されなかった。

原子力の元専門家である16人の勇敢なシニアボランティアからなるもうひとつのグループは、飯舘村の家々の洗浄をおこなった。この村落は警戒区域(20キロ圏内)から約10キロメートル離れたところにあるが、高いレベルでの放射能が検知されている。


「フクシマでは、人員の安全が保証されているとは言い難い」

福島原子力発電所の状況が、安定しているとは言い難い。東電は、6月5日(日)に、原子炉冷却のために用いられた数万リットルの汚染水を、一時的に保管するための貯蔵タンク370基を、トラックで輸送することを発表した。この貯蔵タンクは、合計で4万トンの容量がある。東電の株価は、大規模な損失を報じた情報によって、6月6日(月)に大幅に落ち込んだ(27.62パーセント)が、東電は1月までには原子炉の温度を100度以下に抑えて安定させることを望んでいる。

3月11日の地震津波から三ヶ月が経とうとしているが、原子炉を冷やすために交替で働いている人員の安全が保証されているとは言い難い。福島原子力発電所を幾度か訪問した愛媛大学公衆衛生分野長、谷川武医師はこのように語る。「労働と休息─多くの場合共同寝室だが─の条件は改善したが、まだまだ不安定であり、体力を回復させるための睡眠が不足することによって、事故につながる恐れもある」。またこの医師は、次のように分析する。「働いている人たちはストレスに冒されている。彼らは危険に直面しており、また近隣に住んでいた人であれば、近親者や家を失ったという苦痛を内に秘めていることもある。避難所で暮らす家族の元に帰った者の中には、彼らの勇気を称えながらも、東電のために働いたことを非難する他の被災者たちから、排除されたと感じる人もいる」。

3、4号機の中央制御室で働いていた二人の社員は、6月3日(金)に、一年間250ミリシーベルトの被曝限度量を超える放射線を浴びていたことが公式に認められた。

老人たちは、この震災でもっとも被害を受けた年齢層である。第二次世界大戦直後の困難と犠牲を知る彼らは、公共への奉仕の観念が根付いた世代でもある。シニアボランティアたちの献身が呼び起こす賛嘆の念がいっそう高まっているのは、政治家たち─大部分は60歳代である─が、6月2日(木)に内閣不信任案を提出し、国全体を覆っている現在の危機に際しては時宜を得ないと言うほかないこの行動によって、いかにもお粗末なイメージを与えてしまったせいでもある。この不信任案は、菅直人首相が数ヶ月以内の辞任を表明したため、否決された。

この政治の混乱を、世論は、怒りとともにではなくとも、苦々しく受け取っている。その一方で、原子力発電所では人々が日々健康を危険にさらし、10万人の人々がいまだ避難所で暮らし、被災者たちはまだ、身近な人々の遺品を求めて、瓦礫の間を探し回っているのだ。


Philippe Ponsフィリップ・ポンス


(trad. AK)


参考)福島原発暴発阻止行動プロジェクト」
http://bouhatsusoshi.jp/