「現在の破局は、人間たちの無分別によって引き起こされたのです」
佐藤栄佐久元福島県知事インタビュー
Le Monde 28/03/2011 13h14
ル・モンド 2011年3月28日13時14分更新
東京より特派員―日本の原子力政策の不透明性はかねてから、さまざまな政治家によって問題とされてきた。そんな政治家の一人に、福島県元知事の佐藤栄佐久がいる。佐藤は、福島原発の所有者・操業者である東京電力に対して戦いをしかけたのだった。
小泉純一郎首相(2001−2006)の新自由主義政策に反対した、元外交官と元参議院議員の経歴を持つこの71歳の人物は、5期にわたって再選され、1988年から2006年にかけて福島県知事を務めた。彼はいまも福島県に居を定めている。
記者―東京電力はかねてから調査資料を改ざんしてきました。あなた自身もこの不正には気づいておられましたか?
佐藤―問題は東京電力だけではありません。2002年、県庁は原子力安全・保安院の資料を受けとりました。その資料によると、東京電力は福島第一原発の二つの原子炉の炉心の周囲に見られた損傷についての調査結果を改ざんしたことを認めていました。
私は、こうした東京電力と原子力安全・保安院の態度を許しがたいものと考えました。原子力安全・保安院は、原子炉の機能を監視する役割を担う国の機関であるにもかかわらず、既に二年前に知らされていたこの情報を秘密にしていたのです。
このスキャンダルの結果、福島第一原発第1号炉は操業停止され、翌年には他の16の原子炉も調査の対象となりました。この3月11日まで、私はこの改ざんの悪夢に取り憑かれていました。色々と悪いことを予感させましたから。今回、ついに恐れていたことが起こってしまったのです。
記者―2000年初めに、あなたは東京電力の下請け企業の従業員たちから、20通ほど、安全基準が守られていないことを告発する文書を受け取ったとのことですね。
佐藤―われわれのところには、国の監督はもはや信用できないと考えた人たちから内部告発が届き始めていました。そうした手紙は、自分たちの労働条件をかえりみて、安全性に対する不安に駆られた従業員たちの絶望の叫びと言っていいものでした。
その告発の主たちは、自分たちが規定で定められている時間の倍のスピードで点検作業をしなければならなかったことを明かしていました。私は、名前は伏せたままで、告発の手紙の内容を安全・保安院に知らせました。2006年に私が県知事の職を辞した後、これらの告発に対していかなる措置がとられたのか、私には分かりません。
佐藤―われわれが現在直面している破局は、政治的決定プロセスが堕落した結果の、人間たちの無分別によって引き起こされたのです。かねてから、原子力安全・保安院を経済産業省から切り離すべきだという声はあがっていました。
言いかえれば、監視にあたるべき組織が、原発建設を推進する行政府と同じ穴の狢だったと言うことです。こんな状況で、監視がまっとうになされるはずがない。日本は民主主義の国と言うことになっていますし、それはある意味では間違いではない。しかし、多くの意志決定が不透明な利害に基づいて行なわれており、多くの分野が腐敗しきっていることもたしかです。
記者―原子力エネルギーの運営は、利益追求の原則にしたがって動かされる私企業に任されるべきだとお考えですか。それとも国がそれを担うべきだとお考えですか。
佐藤―私は、問題をそういった選択肢で考えることはできないと思います。チェルノブイリの悲劇は、国家の管理する原子力発電所で起こったのです。日本では、私企業の管理のもとで起こりました。重要なことは、意志決定を下すプロセスが民主的にコントロールされているかいなかです。
インタビュアー:フィリップ・ポンス Philippe Pons
(trad. KO)
参考1:佐藤栄佐久元福島県知事http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%90%E8%97%A4%E6%A0%84%E4%BD%90%E4%B9%85
参考2:「無分別が生んだ破局」と前知事http://www.47news.jp/CN/201103/CN2011032801001106.html