フクシマ:放射能の東京への影響は?

http://sciences.blogs.liberation.fr/home/2011/04/fukkushima-quelle-radioactivité-à-tokyo-.html

Libération Le 1er avril 2011リベラシオン 2011年4月1日

フクシマから立ちのぼる放射線はどこまで拡散していくのか。それは長期にわたる脅威となり、避難地域の外までも危険にさらすのか。たとえば、メガロポリス 東京はどうだろう。

その問いに一定の答えを与えてくれるのが、大気中の放射線量の測定結果を示したこのグラフだ。測定したのは、KEK高エネルギー加速器研究機構]−−東京の北方に位置する大きな科学技術大学[原文ママ]、筑波大学にある[実際には筑波大学KEKは別組織]シンクロトロン[粒子加速器]施設−−である。

KEKの物理学者たちがウェブ上にリアルタイムで公開することに決めたその測定結果が、信頼するに足る、誠実で精度の高いものであることは疑う余地がない。誰でも常時それを見ることができるようになった。


グラフが示すものは何か。測定地点の通常の環境放射線は、平均して0.07~0.09マイクロシーベルトである。このグラフでの最高値は毎時0.5マイクロシーベルト弱だ。しかし、その数値はその1時間の平均値である。KEKについての以前の記事で指摘したように(注)、毎分の数値を見ると、最高値は1.1マイクロシーベルトまで上昇していた。
(注)[http://sciences.blogs.liberation.fr/home/2011/03/une-mesure-indépendante-de-radioactivité-au-japon.html]
早くも3月16日には最高値に達している。急激に跳ね上がり、すぐに下降。その後、3月21日から23日にかけてはふたたび毎時0.3マイクロシーベルトまで上昇し、それからはなだらかとではあるが確実に下がって毎時0.18マイクロシーベルトまで減少している。

フランスにおける自然被曝放射線量の平均値は、年間2.4ミリシーベルト(そこには人体自身が発する放射線0.25ミリシーベルトも含まれるが、もちろん環境放射線測定値とは区別される)、すなわち年2400マイクロシーベルトである。

この[KEKの]測定結果から次のことがわかる。事故による大気中への放射線放出の大部分が、初期の段階で起こったこと。3月20日頃、その一部が風によって西や南に運ばれたこと。そして、大都会である東京に対してとられた予防措置(水道水から子供に対する法定許容値を超える放射線量が検出された際の摂取制限)が妥当なものであること、である。

それに対して、大気に乗って拡散した放射性物質による福島第一原子力発電所の周囲数十キロの汚染への対応となると、はるかに難問で、論争は激しくなるばかりだ。避難地域の拡大をさまざまなNGOが要請しても、日本政府は、住民が飲料水や農畜産物に関する制限指示に従っているかぎり危険はない、と明言している。だが、制限が守られているという保証がどこにあるのか。しかも測定機器の数が足りなくて、すべてをチェックするのは無理なのだ。

東京電力と政府による発表は住民にとって明快なものではない、とIRSN[フランス放射線防御原子力安全研究所]所長ジャック・ルピュサールは訴える。当局は測定結果を伝えるときにベクレルの数値を列挙するだけだが、ルピュサールに言わせれば、「いまは公衆衛生の観点に立った言葉が欠落しており」、住民の健康を考えるにあたって「なんら意味のないおびただしい数の数字が提供されている」。たとえば東京電力は、福島第一原発付近の海水から「法定基準値の数千倍」の濃度の放射線ヨウ素を検出したと発表した。これこそ健康被害の検討にとって無用の情報だ、とルピュサールは声を大にする。「人は海水を飲むわけではない」。しかも彼の考えでは、住民たちの健康の保護という観点から言えば、「放射性物質が日本上空の大気に拡散するよりは、海洋に広がっていくほうがまだまし」なのだ。とりわけ1ヶ月で放射能がほとんど消失してしまうヨウ素131については、論理的かつ理性的な見解ではある。しかし、この見解を納得してもらうのはなかなか難しいだろう。

[以下略、海洋汚染については下掲の記事を参照]

Sylvestre Huet シルヴェストル・ユエ
(trad. SM)

参考1:KEKが公表している放射線量グラフhttp://rcwww.kek.jp/norm/
参考2:水道関連のニュースを紹介するサイトhttp://water-news.info/?paged=1
参考3:東大病院で放射線治療を担当する医師らによるブログhttp://tnakagawa.exblog.jp/